早稲田大学で2回目の「地方行政リーダーシップセミナー」を開催


 2019年7月23日(火)、「第二回地方行政リーダーシップセミナー」を早稲田大学環境総合研究センターとの共催により、早稲田大学26号館で開催しました。
 まず、「変化する世界と日本」と題して、(公財)日本国際問題研究所理事長で前駐米特命全権大使、元外務省事務次官の佐々江賢一郎氏が基調講演。一流の外交官が、トランプ大統領、中国とロシアとの関係、インドの役割、朝鮮半島情勢などについてお話してくださり興味深い内容でした。私たちがメディア等で得ている情報に基づく判断にある意味で信頼感を持つことができました。

谷畑英吾・湖南市長
 続いて、滋賀県湖南市の谷畑英吾市長が、「外国人労働者家族に対する地方自治体の対応」と題して講演。約200ページにわたるパワーポイントデータという膨大な情報量の内容を、実に手際よく一時間ほどでお話ししてくださいました。
 今後特定技能等による外国人労働者の増加にともなう市町村の課題の増加と対策の必要性を先取りする内容で、大変参考になりました。

 続いて、私も「地域発の生きた政策を目指して-縦割りの隙間には宝物が転がっている-」と題して、「子育ての駅」や「教員サポート連成塾」等の長岡市において霞が関の縦割りを埋めて成功した政策を事例にお話ししました。
 佐々江さんと谷畑市長さんの約20分の時間オーバーを取り戻すため、駆け足でしたが何とか遅れを取り戻しました。講演も会を重ねるにつれてようやく慣れてきたようです。

左から谷畑・湖南市長、林茂男・南魚沼市長、私、大嶋由紀子・十日町市議
 終了後、谷畑・湖南市長、林茂男・南魚沼市長、大嶋由紀子・十日町市議等と記念撮影をしました。
 なお、滋賀県湖南市の谷畑英吾市長は、講演を聴きながらその場でスマホに速記するという特技をお持ちです。その速記の成果をフェースブックにアップされましたので、次にご紹介いたします。

(以下、谷畑市長速記)
10時から早稲田大学26号館で開かれた早稲田大学環境総合研究センターと一般社団法人地方行政リーダーシップ研究会による「第2回地方行政リーダーシップセミナー」に講師として出席しました。
自分で喋った部分はメモできませんでしたが、それ以外についてはメモりましたので、正確性を少し書いているとは思いますが、メモとしてお楽しみください。…

セミナーは、早稲田大学環境総合研究センターの岡田 久典上級研究員の司会により、研究会の森 民夫理事長のあいさつで始まりました。

最初に、元外務事務次官で前駐米国特命全権大使の佐々江賢一郎公益財団法人日本国際問題研究所理事長から「変化する世界と日本」と題して講演がありました。

《日本は参議院選挙が行われたが政治が安定している。日本では選挙が行われることを当然ししているが、行われなかったり、不正が行われているところが多い。日本は世界的に見て相対的に安定した秩序の中で、与野党が民主的制度の中で議論が行われている。これが当然視されているが、日本は良い位置におり、安住することなく進まないといけない。
世界は良い方向に向かっているのか。世界各国受け止め方は違うが、不確実や不安があると受け止める人が増えている。
世界経済は、リーマンショック以来、基本的に拡大基調で来ている。これがスローダウンするのではないかとの議論がある。中国景気はそのものがスローダウンするだけでなく、周りに影響を与える。アメリカも戦後最大の景気の長さが続いており、来年スローダウンするという人もおり、トランプはこのまま行くという人もいて、どうなるかわからない。
貿易も、米中戦争はアメリカだけが悪いわけではないが、WTOの多国間ではなく、アメリカ第一で二国間で解決しようとの大統領の姿勢がある。
ヨーロッパは民主主義の危機。民主主義は右も左もいるが、妥協しながらコンセンサスを作ってきた。しかし、余りにも対立が厳しくなっている。中道でなく、右派、保守的、ナショナリズム、排外的、もしくは反対の左派、中央政府にチャレンジする、良く言えば個人主義だが悪く言えば国政に悪影響を与える人たちがいる。
われわれからはそう極端とは思わない国民皆保険や教育無償化政策も、アメリカでは社会主義だと言われる。統治体制に自信を失っている。
また、アメリカとイランの紛争が先鋭化している。アジアでも北朝鮮問題は不透明。中国は発展してきたがきしみがある。政治体制的には経済発展主義が、民主主義でなく独裁主義に向かっている。香港とか。米中間の紛争も対立している。日本と韓国の間も対立的。
最も重要な変化はアメリカで起きている。アメリカは、戦後長い間、世界の自由体制を引っ張ってきた。ブレトン・ウッズ体制であり、どこかの国が多国籍関係を崩す場合にはアメリカが介入してきた。これをアメリカ自身が二国間関係を主張して崩してきた。パリ条約からの脱退や人権委員会から身を引くとし、国際銀行も自分のことは自分で、と言い出している。トランプ大統領は理念でなく力で引っ張っる、ディールをする、アメリカ国益を第一とすることで、きしみが出ている。
アメリカはどうなるか。アメリカ国内は右派と左派で分裂している。右派にも中道右派、左派にも中道左派があり、ミッドウエストや東海岸、マサチューセッツなど、地域的にも色分けがはっきりしている。
選挙がどうなるか。トランプ大統領の治世が続くかどうかが世界に大きな影響をもつ。どうなるかと聞かれたときには五分五分と答えている。オバマとトランプの選挙のときにはみんな間違えていた。
要素はいくつかある。まず、経済。どんな選挙も経済が悪いと人気がない。今のアメリカは景気がよく雇用もパンパン。人手不足。アメリカは囚人が多いがそういう人まで積極的に雇用している。今の状況が続けばトランプ大統領に有利。
しかし、景気はいつかは下がってくる。アメリカの連銀はソフトランディングするのに金利を上げてこようとしてきたが、世界経済に影響もあり、大統領の圧力もあり上がっていない。
左派は比較的経済は良くなっていないという。金利が低くて貧富の差が大きくなり、財政赤字も増えるという。トランプは福祉もやり、財政赤字を増やしている。このあとどうなるかわからない。
また、トランプは国民の支持が常に40%の熱狂的な支持者で支えられ、50%が反対している。支持率が半分を超えない珍しい大統領。しかし、大きく下がらない。これが支持者のトランプ離れを招くかどうか。トランプはときどき突拍子もないことをいう。ヒラリーが嫌いでトランプに投票した人もいるが、女性や少数民族を批判したりしている。ロシアをめぐる問題についても、一応FBIの捜査は終わったが、十分な立証はできなかった。しかし、トランプが捜査妨害したと民主党が弾劾しており、大統領が疑惑の中で適切なのかという批判もある。
さらに、民主党でトランプに勝てる候補がいるのか。トップはバイデン、さらに女性上院議員やサンダースなど出ているが、民主党の中も中道と左派で分断されている。民主党左派が出てくればトランプに有利だという人もいる。しかし、アメリカだけにどうなるかわからない。
ヒラリーが負けた理由は、接戦州という中西部の鉄鋼州、石炭州、農業州で負けたので、これに民主党が勝てるのか。トランプはこれに勝った。しかし、ペンシルバニアやウィスコンシンでトランプは今度は勝てるのか。勝てないとされており、バイデンが出ている。そうした秘密調査がリークされ、担当者はクビになった。バイデン人気が続くとわからなくなる。
つまり、経済は○、貧富の差で☓、支持率で△、接戦州の状況は△で、全体として五分五分。
では、トランプが大統領から変わるとアメリカは変わるのか。これは変わる。トランプはオバマの否定で出てきた。バイデンになればオバマの政策を出してくる。しかし、変わらないところもある。
それは、①まず、アメリカは、もはや世界の警察官はやらない。これは共和党も民主党も変わらない。②次に、アメリカの相対的な力は世界第一だが、中国やロシアもあり、同盟国に分担を求めてくる。これも超党派。③そうでありながら、世界を一律にするのでなく、アメリカの安全に重要でないところには出ていかない。日本などにはコミットメントはある。④アメリカは左右の対立があるが、超党派で一致するのは、ひとつは中国は警戒すべき、脅威は増大している、経済的軍事的脅威ということ。さらに、巨大な国家を超えたデータのプラットフォーム企業は規制すべき、個人プライバシーやデータが蓄積されて管理されていくこと。これは、国家の安全保障との関係がある。例えばサイバー攻撃などに企業は協力するのか、グーグルやフェイスブックは、中国には従うがアメリカ政府に協力するのか。
来年の選挙に向けてトランプがどうなるか大きな影響を与える。しかし、アメリカでは、議会やマスメディア、政府においては、日米同盟には理解がある。だが、それで安心できるのか。
安倍トランプの友情関係はあり、大きな資産だが、首脳同士の緊密な関係で、日米貿易のさざなみはヨーロッパに比べて低い。しかし、アメリカの日本への要求は、ひとつはTPPに入らず他国に劣後したが、農民から圧力があり早く何とかしろとされている。そうした声は接戦の中西部州に多いので、トランプは何とかすると言わないといけない。参議院選挙までは静かにしていたが、今後はメガホンが増大してくる。ヒートアップしてくるので早く決着すべき。そのほうが泥沼に入らない。今年度中のほうがよい。
もうひとつ、安全保障。トランプは日米安全保障条約は片務的だと再三言っている。それは当然だが、アメリカに守ってもらうだけでなく、アメリカの海外展開部隊の最大の軍隊が駐留しており、アメリカも利益を得ている。しかし、だからといって防衛努力をしなくてよいわけではなく、残念ながら世の中は軍拡の流れだ。中国が宇宙やハイテクで軍拡しており、アメリカは脅威をもっている。日本も何もしなくてよいわけでない。だだし、軍備にお金を使えば軍国主義かといえば間違い。ヨーロッパは日本の2倍の軍備を持っている。抑止のためには必要であり、付け入る好きを見せないために必要だ。
中国とともにロシアに注目。戦後秩序という長い時間で見ると、冷戦が終わりロシアは驚異がなくなったとされるが、民主主義となったものの独裁とは言わないが独裁的なプーチン体制が失地回復に動いている。ウクライナに介入しており、クリミアを領土にした。ヨーロッパでは脅威を感じている。また、かつてソ連が影響していた国を抑えようとしており、中東でもNATOのトルコを揺さぶっている。これまでロシアは静かだったが、修正しようとしている。
最も大きな修正主義は中国。インドは伝統的に陸で中国と小競り合いがあるが、今は海洋で中国の脅威を受けている。伝統的中立国のインドはアメリカ、日本と協力している。
日、米、中の関係が難しい。日米が重要なのは当たり前だが、中ロとの関係もバランスが必要。日中が連携を始め、しばらく途絶えていた日中首脳往来は活発になる。そのことが日中の課題を解決できるか、東シナ海の尖閣や大陸棚、南シナ海のシーレーンの問題は、簡単に解決できないので中長期的に取り組まないといけないし、価値観、民主主義、自由、人権などを共有する国と協力しないといけない。中国との間は和して同ぜすが大事だ。
一番重要なのは日米同盟。これが崩れると中国やロシアがチャンスとする。ロシアは昔からの戦略であり、惑わされずに行くべき。
朝鮮半島では、北朝鮮の核問題は年々悪化している。合意が破棄されるたびに開発が進む。トランプ大統領がユニークなのは直接対話したことで、なかなかできないこと。外交ではフェイスツーフェイスで話すことは大事であり、保険でもある。常に話ができる関係の維持は大切で、問題は中身が伴っているのか。成果が出ておらず、不透明である。ディールメーカーなのて、金正恩がアメリカへ、トランプが北朝鮮へとマスコミが騒ぐだけにならないように、日本は日朝関係で拉致問題解決、日朝国交正常化と、その先に核問題の解決につなげるため、総理が対話の窓を開けているのは良いこと。
韓国は左派の政権ができ、慰安婦問題合意の不十分な履行、破棄ではないが、いわゆる「徴用工作」をめぐりきしんている。日本は原則的立場をルール、条約に基づいて解決すべき、韓国の裁判所に日本が支配されることはないので姿勢を維持すべきだが、韓国の代表団も今月末に来日すると聞くので、リーダーシップをもって解決すべき。その間、国民の悪感情を煽るべきでない。
日本は、①日米同盟の基軸をゆるがせない、アメリカにも左右があるが惑わされない、②中ロなと難しい関係国とも原則を維持しながら関係を解決する、③グローバルな体制をヨーロッパやアセアンをよいパートナーとして努力して維持すべき、中長期的にはアフリカも取り込み、いずれアメリカもスイングして戻ってくる。》

佐々江理事長は、質疑応答を含めて予定を10分オーバーして終わりました。

次に、湖南市長から「外国人労働者家族に対する地方自治体の対応」と題して講演を行いました。内容は割愛です。こちらも質疑応答を含めて10分オーバーして終了しました。すみませんでした。

最後に、森理事長から「地域発の生きた政策を目指して」と題して話題提供がありました。

《霞ヶ関は縦割りの宝庫だが、市町村は生活の現場であり縦割りはない。
国は全国的視野はあるが現場力はない。都道府県は広域調整をするが現場力は三角。市町村は全国的視野はないが現場力、縦割りの総合化はできる。この3層制のパイプの目が詰まらないようにすることが、真の地方分権国家になる。
営業や生産の縦割りの総合化が社長の役割であり、パナソニック、ソニー、本田技研工業など、現場と社長の距離が近い企業が世界的な企業に発展した。
都市公園に子育ての駅を作ったが、母親は周囲に相談できる人がいない、ご近所に知られたくない、市役所に相談に行く勇気がないとの声があり、市長として雪国に雪国向けの公園が必要ではないか、公園はもともと子育て相談の場だった、公園に子育て相談施設を作りたいと気づいた。
平成13年に空きデパートを市民センターとして借り上げ、ワンフロアをちびっこ広場として活用し、相談のためにベテラン保育士を配置した。子育ての駅を公園内などに順次作っていった。長岡版ネウボラとして、医療機関、助産師、保健師、母子保健推進員、主任児童委員などとともに保育士も配置した。子どもの発達障害を自覚することが大事だ。厚生労働省と国土交通省の隙間を埋めた。ビルの4階ワンフロアを都市公園として都市計画決定できないかと聞くと公園緑地課長はう~んということだった。厚生労働省は相談を保育園でやればよいというが、母親は相談しにくいという。プライバシーや中の悪い子どもについての相談は難しい。しかし、厚生労働省も自分の土俵で勝負したいということだ。
また、平成15年度から教員サポート錬成塾を作った。独自雇用の教員OB・OGがマンツーマンで教員を指導している。教員は3〜6年で転勤するが教師の育成は異動に関係なく行うべき政策判断で事業化した。縦割りと縦割りを埋めた。
さらに、総合支援学校を作ったが、これは厚生労働省と文部科学省都の垣根を越えた。
最後に、特定技能での新たな外国人材の受け入れで、出入国在留管理庁ができた。特定技能1号は配偶者の帯同は認められないが、特定技能2号では帯同できるようになる。妥協の産物であり、谷畑さんの話にもあったが、日本は移民政策に舵を切った。法案を通すときにこうしたが、いずれ認める。法務省は出入国管理をするが、特定技能の受け入れ試験は各省庁で行われる。業界団体の協議会も各省庁別になる。統一感はない。自治体が問題を起こしたら、矢面は各省庁。法務省は自治体とつながっていない。これも縦割りの問題だ。》

そして、さすがの森理事長は、20分押しの予定時刻を見事に取り戻し、12時30分ちょうどに終了しました。